媒染

「みょうばん」の袋のナスが照り輝いていますね!
「みょうばん」の袋のナスが照り輝いていますね!

(染色用の道具に使ったバケツと鍋と箸のほかに)

 

染色用ボウル(ステンレス製だと直火にかけられます)

焙煎剤(今回はスーパーで気軽に買える「みょうばん」にしました)

※焙煎には、薬品を使うこともありますが、今回は茄子の漬物などに気軽に使われる「みょうばん」

ですので、気にしないのであれば日常使っているボウルや鍋でokです。

 


おそらく、「銀杏煎り」や「呉汁」にまだ馴染みのない方も多いかと思いますが、
この、「みょうばん」についてもあまり馴染んでいない方は多いと思います。

 

そもそも、「媒染」とは…?

ここで私が思い出すのは、

ナスや、ラディッシュや茗荷などの、漬物や煮浸しや、マリネです。

 

ナスを塩水に浸けっぱなしにしたり、
ラディッシュや茗荷をお湯で湯がくとどうなるでしょう?

ナスの紫色や、ラディッシュや茗荷の赤色は薄くなりますよね

 

そんな時、少しでも色鮮やかなナスや、ラディッシュや茗荷のままでいてほしいと望むのは、
私だけではないと思います。

油を使わないで、ナスを色鮮やかに柔らかくするには、色々と工夫が必要です
油を使わないで、ナスを色鮮やかに柔らかくするには、色々と工夫が必要です
こちらも、新聞のレシピです。ミョウバンを使わないで、紫色を残す方法の一つをマスターしました。(肉のたれの、ヤンニョムチョカンジャン以外には、油は使っていません)
こちらも、新聞のレシピです。ミョウバンを使わないで、紫色を残す方法の一つをマスターしました。(肉のたれの、ヤンニョムチョカンジャン以外には、油は使っていません)

染色も同じです。

 

折角好みの色合いに染まったのであれば、そのままの色でいて欲しいものです。

 

(勿論、ジーンズの色の変化も魅力的ですが。)

 

丈夫な作業着が、日々の生活でくったり体に馴染み、
少しずつ、自分と共に無理なく適度に変化したと実感できる風合い。
これもまた、格別です。

でも、これもゆったりとした時間の中でのこと。

 

折角、手間暇かけて染めたのに、
洗濯したらあっという間に色あせて、白っぽくなってしまったら、がっかりです。


その、「染めた色を、洗濯してどれだけ残していけるか」
という事は、「どれだけ濃い色で染色できるか」と同じ位
染色の大切なポイントだと思っています。

 

この、どれだけ洗濯をしても色落ちしにくいか、ということを「染色堅牢度」といいます。

 

この、染色堅牢度を高め、色を定着させるために行う作業
「媒染」と言うのです。


じゃあ、ラディッシュや茗荷はともかく、ナスは、
油で炒めたり、素揚げにしたら?

 

という方もいらっしゃるかもしれません。(油と一緒だと色落ちしにくくなります。

 

しかし、ここで、染色の焙煎の素材でもある「みょうばん」を活用するという
私なりのこだわりが発生します。

何かと食生活で、オイリーなものを食べがちだったり、
日頃の健康管理で、コレステロールを気にする方であれば、

 

少しでも油の使用を減らしたいと思うのではないでしょうか。

ナスは油を吸いやすいのです…

 

そんな時に、お湯の中に「みょうばん」を入れて煮れば、
色落ちの少ない、ヘルシーで柔らかなナスになるのであれば、活用したいと
考える方もいらっしゃると思います。

色落ちしやすいナスも、ミョウバンを入れて煮れば、
色落ちしやすいナスも、ミョウバンを入れて煮れば、
煮浸しにしても、紫色は、鮮やかなままです。(こちらも、新聞のレシピですが、ほんの少しだけ(人垂らし)、オリーブオイルが入っています)
煮浸しにしても、紫色は、鮮やかなままです。(こちらも、新聞のレシピですが、ほんの少しだけ(一垂らし)、オリーブオイルが入っています)

ナスの皮の色の紫色は、「ナスニン」という色素で、
「アントシアン」系色素の「ポリフェノール」の一種です。

 

抗酸化作用があり、動脈硬化などを防ぎ、血管をキレイにしてくれるので、
油分を気にされている方であれば、意識的に取り入れるようにするといいと思います。

「ナスニン」だけではなく、「アントシアン」は一般的に植物の色を作るために広く含まれていますが、
(名前の由来は、ヤグルマギクの青色色素だそうですが…)

 

とても不安定な物質なので、水に入れるとすぐに色素が溶け出してしまうのです。

(呉汁処理の中の、「ナスと油揚げの呉汁」を見ると、ナスが赤っぽくなっているのが判ると思います。)

 

しかし、そこにアルミや鉄のイオンを加えると、それらと結びつき、布の繊維の中で不溶性の
安定した物質へと変化します。

 

つまり、ナスの漬物の中にミョウバンを入れるという事は、
ミョウバンの中に含まれている金属イオンミョウバンはアルミです)と結びつけて、
ナスの皮に色素が残るようにしたものなのです。

 

「アントシアン」の名前の由来ともなった、「ヤグルマギク」です。
「アントシアン」の名前の由来ともなった、「ヤグルマギク」です。
こちらは、某イギリスの紅茶会社の製品です。ヤグルマギクがブレンドされています。
こちらは、某イギリスの紅茶会社の製品です。ヤグルマギクがブレンドされています。

更に、「ナスの糠漬けには、昔から古釘を入れると良い」という考え方も、
草木染めの「鉄媒染」の考え方と相通じるところがあると思います。

 鉄イオンと「ナスニン」を結び付けて、ナスの皮に色素が残るようにしたものだと思っています。

 


じゃあ、ラディッシュや茗荷は?

 

こちらは、PHが影響します。

 

アントシアニンの色のPHによる変化は、

アルカリで  青~緑
中性で    紫
酸性で    赤

と変化していきます。

 

とすれば、赤い色を出すためには、酸性にしていきます。
そこで、酢を使用します。

湯がいただけのラディッシュも
湯がいただけのラディッシュも
お酢の力で、赤みが増しました。
お酢の力で、赤みが増しました。

前述したように、ラディッシュや茗荷も、お湯で湯がくとナスのように色が薄くなりますが、
それを、お酢の入ったマリネ液や、甘酢の中に入れると、パッと赤みが戻ってきます。

 

植物の本来持っている色素の特性を考えると、日常の生活でまるっきり分野の違うものでも、
思いがけない共通点を見出すことがあるものです。

「日本一遠い温泉(仙人温泉)」で浸かった時の、くれない色の空…「
「日本一遠い温泉(仙人温泉)」で浸かった時の、くれない色の空…

植物染料を用いた染色で、今回のテーマである媒染剤を使用しないものがあります。

 

その中には、

 

紅花(中国から来た藍という意味で、呉[呉汁の呉と同じ文字ですね]

から来た藍=「くれない」とも言われています)

 

や、

 

がありますが、

 

アルカリで色素を抽出して、その後、酢や酸素etcで定着させるなど、

 

やはりPHが深く影響していることは、
とても興味深いことです。

くれないと、藍の重ね染めです。順番を間違えると、先に染めた色が台無しになってしまいます。
くれないと、藍の重ね染めです。順番を間違えると、先に染めた色が台無しになってしまいます。

具体的なやり方


①ボウルにミョウバンを入れ

(染める量の5~10%)

少量の水を入れて煮溶かす。

 

溶けたら、染色物が浸かるくらいの水に入れて混ぜる。

②昨日染めて浸けておいた、染色物を①に入れる。(染液は又使うので、捨てない)

 

そのまま20分浸ける。

③20分経過後、

 

昨日浸けておいた、染液の鍋に戻す。


④鍋をコンロで点火。

始めは小まめに、糸を天地返しをする。

煮立ったら、鍋を半分ずらして火を弱める。

途中15分で一回天地返しをして、30分煮る。

 

蓋をしたまま約20分染料を染み込ませる。

⑤コンロから引き上げ、水道水で濯いで、染料、焙煎剤を洗い流す。(焙煎剤が含まれているので、しっかりと洗い流す)

 

絞って軽く水切りをする。

⑥洗濯機に輪の状態で入れて、脱水のみ行う。

 

しっかりと干す。